朝井リョウ「風と共にゆとりぬ」の感想

 仕事がひと段落したのもあり、久しぶりに書きます。
 最近読んだ書籍の中で、朝井リョウ氏のエッセイ「風と共にゆとりぬ」が面白かったです。


 「桐島部活やめるってよ」でかつて高校生デビューした著者の、二作目のエッセイ集。20代の著者の日常が軽妙な文章で語られています。
 文章から察するに、著者は鋭く独特な感性と、ちょっと突き抜けた行動力を持った人だと思います。その一方で、一般的な常識感覚も持ち合わせた人であり、自身をごく冷静に客観視するのも巧みなようです。その主観と客観のバランスがちょうどよく、そのためシンプルに読みやすく面白く感じました。
 正直言うと、(三作品くらいしか読んだことないのですが)著者の小説よりも面白く感じました。小説家としてはおそらく不本意な評価なのではないかとも思うのですが。著者の武器である日常に対する鋭い感性が、創作のキャラクターより自分自身に向いた方が、より生々しいということなのでしょうか。 

 本書のエピソードの中でも、痔ろうになった苦労と治療を終えるまでの体験をつづった「肛門記」の章が面白かったです。
 「痔ろう」って、本書内で絵つきで解説されてるのですが、まさに「お尻に二つ目の穴が開く」恐ろしい病気なのですよね。あんな感じの絵を見たのは実は初めてではないのですが、「どういうこと!?」と衝撃を受けたものの、実態がわからずにいました。(こちらの病院のサイトに似た図があります)
 そんな謎の病について、事の発端から悪化、治療まで、切々と、しかしコミカルに語られていたのは、大変興味深かったです。

 命にかかわらない明るい闘病記って、当事者は苦労されているのでしょうが、読む側としては妙に面白いんですよね。日常の中の非日常だからなのかも。似た系列のエッセイとしては、新井素子さんの「もとちゃんの痛い話」もめちゃくちゃ面白いです。どうも絶版みたいなのが残念ですが、図書館には結構あるのではないでしょうか。




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