【ハルタ volume75 感想③】九国のジュウシ、峠鬼、昴とスーさん、ダンジョン飯

 今月号のハルタの感想の続きです。

・西公平「九国のジュウシ」
 統虎の初陣回。緩い感じの絵で殺伐とした内容。
 統虎は確実に戦果を上げながらも、十四郎に頼りっぱなしで無力感を感じている様子。十四郎はというと、誾千代にそそのかされた剣術指南役に背後から鉄砲で狙われて次号に続きます。いくら戦場とはいえ、こんなに統虎や十四郎のすぐそばで発砲したらバレバレだろうよと思うのですが、剣術指南役は判断力がすっかりなくなっている顔していますね。

・鶴淵けんじ「峠鬼」
 小角の昔語りの続きです。
 嘆願者の願いを言葉のままかなえてしまうコト様に、憤りを感じる少年時代の小角の話。その憤りの正体が、他者の幸福を願ってのものというより、「恋しい人が誰かの不幸であってほしくないだけ」というのが本当に人間らしい。今回の話を読んでからアイノコ様の回を読んでみると、神器になった少年を羨んだ小角の心情がわかりやすいです。
 願うことに対する業の深さを問うような作品というと、古典の「猿の手」をはじめいろいろなアプローチをしたものがありそうですが、どんな願いでもその価値を決めるのは願った本人だけとするのはなんとなく現代的に感じます。「魔法少女まどか☆マギカ」のテレビ版の終わり方もそんな感じでしたね。古代でありながら現代っぽく、時として未来っぽさも感じられるのが本作の持ち味ともいえそう。
 あと、コト様にラブレターを送った女子三人組が、独特に可愛いかったです。今回の登場人物の中で一番人生を楽しんでいそう。妙といいコト様といい、媚びない可愛さを持った女の子を描くのが上手な作者だなと。
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聞きしに勝りみってなんだよと。

・高橋那津子「昴とスーさん」
 昴が大人だった頃の友人の西尾のもとを訪ね、小さくなったことを説明してわかってもらい、打ち解けて朝まで語り合います。
 小さくなったことを西尾が結構あっさり理解してくれていましたが、あんなに現実準拠の世界で、こんなにファンタジーな境遇を信じられるものなのだろうか。

・九井諒子「ダンジョン飯」
 仲間たちが次々に首狩り兎にやられ、一人マルシルが残される展開。ネクロマンシーで仲間の死体を盾に兎の攻撃をしのぎつつ、ほうほうの体で兎も死体もシスルの家に連れ帰ります。
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完全に猫のイヅツミが可愛い。

 「全員死んでもマルシルがなんとかするから大丈夫」というのは、確かに丸投げされるマルシルからするとたまらないですね。この世界だと自分の死より仲間の死の方が、責任重大なだけ下手したらつらいかも。
 マルシルの恐怖の正体を見た有翼の獅子が、「種族間の寿命の差をなくしたい」というマルシルの力になろうと声をかけます。獅子の目が魔術書の目になっていてすごく悪そう。これで実は善良でしたというオチはあり得るのだろうか。
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翼獅子の悪そうな顔。

 獅子は以前ライオスを誘い、今回はマルシルをそそのかしているように見えます。主人公格の二人がここまでその気になってしまったら、止めるのはもはやカブルーしかいなそう。ゆるくコメディ調で着々と道を踏み外しているのが、そこはかとなく怖いです。

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